研究概要 |
コリアンダー精油中の主要な香気成分については改良型溶媒抽出法を用い、 GCのFIDに対する相対的な応答性も考慮しつつ、香気成分の濃度を定量した。匂いの特徴的な成分について独自な方法(閾値法Lod, GC-O)で検討した結果、2-dodecenal, 2-tetradecenal, 2-tridecenalが主要な香気成分であることが明らかになった.また、咽頭ガンに関連するガン遺伝子をもつリンパ系細胞のRaji細胞に対し、コリアンダー精油にはプロモーターの添加による発ガン性の顕在化(Raji細胞の変形)に対し、抗発ガン活性を示すことを確認し、その活性の主体が2-alkenal類であり、特に2-dodecenalなどが効果があることがわかった。この時点で、香気成分の香りの認知と機能性の発現物質の一致が確認された。また、2-dodecenalの体内吸収、体内動態、代謝等についてラットを用いた実験を実施し、代謝研究を行った。この実験では、フラボノイドなどの体内動態の解析によく使われるラットの頚静脈留置法であるカヌレーション法を使い、任意の時間に香気成分の血中濃度の測定により解析した。解析に先立ち、効率よい、血清中の2-dodecenalの分析法を確立し、測定限界濃度等を決定した。その結果、血中を循環するが、3分以内に血中からは排泄,代謝されていることが明らかになった。また、ラットの呼気から若干ながら2-dodecenalが検出されたことから、肺を通じ、2-dodecenalが血中との間に物質循環が有ることが明らかになった. 食品香気として認知する物質が肺からの吸気により血中への移行を通じた機能性を正確に評価し、証明した例は少なく、肺への吸収率と抗がん活性に必要な濃度との関係を明確に出来た点で独創的な研究成果を得ることが出来た。
|