研究課題/領域番号 |
22580135
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤野 貴広 愛媛大学, 総合科学研究支援センター, 准教授 (40292312)
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キーワード | 酢酸 / 脂肪酸代謝 / ケトン体 / エネルギー代謝 |
研究概要 |
ミトコンドリア局在型のアセチルCoAシンテターゼ2(AceCS2)を欠損するマウス(AceCS2-KOマウス)は長期絶食状態に置くと、酢酸利用障害のため血中酢酸濃度が著しく上昇し、これと共に低血糖、低体温及び運動持久力の低下を引き起こす。AceCS2を本来発現していない肝臓で特異的に発現するAceCS2・トランスジェニック(Tg)マウスを作製し、AceCS2欠損マウスと掛け合わせることで、肝臓にのみAceCS2発現するマウスを得た。このマウスでは、絶食下においても血中の酢酸濃度は正常レベルまで低下したが、AceCS2-KOマウスとほぼ同様の表現型を示した。これらの結果は、心筋、骨格筋及び褐色脂肪組織に於ける主要なエネルギー源は酢酸であることが明らかとなった。一方、AceCS2-KOマウスは高脂肪食負荷による肥満誘導に対して抵抗性を示す。そこで本マウ系を用いることでAceCS2欠損マウスに見られる肥満抵抗性メカニズムを解析した。高脂肪食負荷において肝臓特異的AceCS2-TgマウスとAceCS2-KOマウスとの間に体重増加に関する違いは見いだせなかったが、本マウスは24時間絶食後の肝臓において著しい脂肪肝様の病態を示し、肝組織切片のオイルレッド0染色では多数の脂肪滴が観察された。一方、AceCS2-TgマウスやAceCS2-KOマウスの肝臓に脂肪滴はほとんど観察されない。これらの結果は肝臓で発現するAceCS2がミトコンドリア内のアセチルCoAを上昇させ、絶食時においても肝脂質合成を亢進又は分解を抑制していることを示唆した。また、AceCS2が肝臓以外の組織に於いて酢酸の酸化によるエネルギー産生だけでなく、脂質合成にも深く関わっている可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
22年度に本研究室の耐震補強工事があったため、研究の達成度に若干め遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、肝臓にのみ特異的にAceCS2を発現するTgマウスの肝脂肪滴形成メカニズムを解析する。また、肝臓で酢酸が脂肪酸の酸化により作られるオクタン酸のエネルギー代謝に及ぼす影響についても検討を続ける。
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