ミトコンドリア局在型のアセチルCoAシンテターゼ2(AceCS2)を欠損するマウス(AceCS2-KOマウス)は長期絶食状態に置くと、酢酸利用障害のため血中酢酸濃度が著しく上昇し、これと共に低血糖、低体温及び運動持久力の低下を引き起こす。AceCS2を本来発現していない肝臓で発現するAceCS2・トランスジェニック(mAceCS2-Tg)マウスを作製し、AceCS2-KOマウスと掛け合わせることで、肝臓にのみAceCS2発現するmAceCS2-Livマウスを得た。このマウスでは通常飼育下及び絶食下において血中の酢酸濃度は低下したが、AceCS2-KOマウスとほぼ同様の表現型を示した。mAceCS2-LivマウスとAceCS2-KOマウスを24~48時間絶食させると肝臓において著しい脂肪肝様の病態を示し、肝組織切片のオイルレッドO染色では肝細胞に多数の脂肪滴が観察された。また、脂肪蓄積量に関しては明らかにmAceCS2-Livマウスで高かった。一方、mAceCS2-LivマウスとAceCS2-KOマウスに0.5% クロフィブレートを1週間与えた後、24~48時間絶食後の肝臓組織をオイルレッドO染色で解析した所、脂肪肝様病態の著しい改善効果が観察された。また同時に、血糖値、体温及び運動持久力の改善が認められた。これらの結果はAceCS2-KOマウスに見られる長期絶食下での低血糖、低体温、運動持久力の低下及び脂肪肝の形成は脂肪組織から動員され肝臓に流れ込んだ長鎖脂肪酸の代謝障害がAceCS2-KOマウスに見られる表現型の主要な原因であることが示唆された。
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