研究概要 |
我々の以前の研究から、魚油の摂取によりラット骨格筋の遅筋化が誘導されることが分かった。この変化が「筋線維内に流入するn-3系脂肪酸が核内受容体PPARδリガンドとなって引き起こされた」のかをin vitroで明らかにするために、ラット単離筋線維培養系の確立を試みた。筋線維の単離培養法について、マウスのプロトコルが報告されているので(Wozniak and Anderson, 2005)、これに従った。概略を述べると、マウスから短趾屈筋(FDB)を摘出し、コラゲナーゼ処理後、穏やかなピペッティングにより筋線維をほぐし、コラーゲンによりディッシュ上に固定する。同様の方法をラットに適用したところ、解析に必要と考えられる筋線維数および生存率が得られなかった。そこで、いくつかの実験条件について検討を行った。0.2%コラゲナーゼ3時間処理の条件で最も筋線維の生存率が高かった。コラーゲンで筋線維を固定したディッシュでは、培養日数の経過に伴い、衛星細胞と思われる単核の細胞の増殖が筋線維の周囲で認められた。筋線維以外の細胞が増殖すると筋線維のみに由来するサンプルの採取が困難になる。この問題は、コラーゲンコートを行わないことで解決した。培養6日目における筋線維の生存率は上腕三頭筋(T)で48%、長趾伸筋(E)で13%、ヒラメ筋(S)で0%とTが最も高かった。さらに生存数も培養6日目においてはTで27本、Eで4本、Sで0本とTが最も多かった。筋組織と単離筋線維のミオシン重鎖組成をSDS-PAGEで調べたところ同一であったことから、単離操作により特定の筋線維型の選別は起こっていないことが分かった。以上より、ラット骨格筋の筋線維を高い生存率で単離する方法を確立した。今後この方法を用いて、in vitroで脂肪酸が筋線維型に及ぼす影響を評価していく予定である。
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