研究概要 |
本研究課題に先立ち、我々は魚油の摂取によりラット骨格筋の筋線維タイプは、遅筋タイプへ移行することを明らかにした。本研究課題では、この変化が「筋線維内に流入するn-3系脂肪酸が核内受容体PPARδリガンドとして作用して引き起こされた」のかをin vitroで明らかにするために、ラット単離筋線維培養系の確立を試みた。筋線維の単離培養法について、マウスのプロトコルが報告されているので(Wozniak and Anderson, 2005)、これに従った。前年度の時点で最も生存成績が良かったのは、ラット上腕三頭筋から分散させた筋線維で、培養6日目で48%の生存率を示した。今年度は、引き続き単離条件の検討を行った。単離操作に含まれる多くの実験条件の中でも、細胞を分散させるためのコラゲナーゼ処理条件と、筋組織の種類が生存率に大きく影響をすることが分かった。以上の点に注意して条件検討を重ねた結果、短趾屈筋(FDB)とWorthington社のCollagenase, Type 2を用いると、単離筋線維の生存率を培養7日目でも90%以上に維持できることが分かった。次にPPARδアゴニスト(GW501516)を単離筋線維に作用させ遅筋タイプに特徴的な因子のmRNA発現量を調べた。また各種脂肪酸のPPARδリガンド活性をレポーターアッセイから調べた。GW501516添加は、遅筋タイプで発現が多い遺伝子(リポプロテインリパーゼ、PDK4、UCP3)の発現量を増加させた。レポーターアッセイの結果、魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)で高いPPARδリガンド活性が認められた。今後はEPA添加が単離筋線維の筋線維タイプに関わる遺伝子発現調節に及ぼす影響を調べていく予定である。
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