研究概要 |
鶏卵アレルギーが疑われる患者17名(0~19歳、男12名、女5名)に、乾燥卵白を含む食品を用いて経口負荷試験(オープンチャレンジ)を行った。その結果6名(0~5歳、男5名、女1名)に陽性反応が観察され、卵白アレルギーと確定診断できた。一方、卵白の主たるアレルゲン蛋白であるオボムコイドに、大型電気分解装置を用いて直流電流を通電し(90V,0.2A)、陽極側、陰極側から溶液を採取した。各々の溶液および通電処理前の溶液を用い、上記6名の卵白アレルギー患者前腕において皮膚プリックテスト施行した。その結果、通電処理前溶液に対する膨疹反応と比較して、陽極側溶液で15%、陰極側溶液で23%減弱していた。通電処理により、オボムコイドのアレルゲン性が損なわれることが分かった。通電処理前後のオボムコイド蛋白をトリプシン処理し、質量分析装置(MALDI-TOF/TOF)4700 Proteomics Analyzerで比較解析したところ、システインを含む2個のペプチド領域(^<81-87>EHDGECK,^<147-152>HDGGCR)が通電処理後の陽極、陰極双方で検出されなかった。システインが通電処理により何らかの変化をうけたものと考えられる。当初は、通電処理によりジスルフィド結合が切断されるものと予想していたが、カルバミドメチル化された場合のペプチドに相当するシグナルが、通電処理後の試料において検出されていないことから、還元反応以外の変化が起こっている可能性もあると考えられる。通電処理によるアレルゲン性低減化に関連するオボムコイド蛋白変化体について、その構造を示唆する直接的な結果を得るために、更に詳細な検討が必要と考える
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