通電処理によって陰極側で生じるオボムコイド蛋白アレルゲン活性減弱化の解析を生化学的に行った。昨年度の研究では、通電前のオボムコイド蛋白および通電処理後の陽極、陰極側で得られた変性蛋白の二次元電気泳動像から、最も大きなスポット部分のみ切り取って、それをトリプシン酵素処理して質量分析した。その結果、陰極側でS-S結合の候補となるペプチド組み合わせを見出せなかった。ただ、通電処理によって蛋白は種々の変化を生じると予想され、実際、二次元電気泳動からも多彩なスポットを得ていた。特定のスポットのみ解析し、それを比較検討することで結論を得ることには問題があるため、今年度は他のスポット蛋白での解析も進めた。比較的大きいスポットで、かつ前回と異なる個所を、通電前および通電後の各々2ヶ所で切り取り、そこに含まれる蛋白にトリプシン酵素処理を行った後、質量分析装置で分析した。さらに、オボムコイドのアミノ酸組成から得られる理論的ペプチド断片の中から、システイン残基をもつペプチドを選び、そのペプチド同士を組み合わせたときの分子量の理論値を計算し、質量分析装置で得られた実測値と比較した。その結果、通電前蛋白分析からS-S結合候補として3種類の組み合わせを、陽極側からも通電前とは異なる3種類の候補が得られた。さらに今回は陰極側からも、それらとは異なる2種類のS-S結合候補が得られた(候補1:15E-24K、57E-82K、122R-128Rの3っのペプチド間、候補2:15E-24K、165C-185Kのペプチド間)。オボムコイド蛋白通電処理によって陰極側で生じる蛋白低アレルゲン化は必ずしもS-S結合解離に基づくものではないことが分かった。
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