研究課題/領域番号 |
22580141
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
平野 雄 北九州市立大学, 教授 (40258629)
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研究分担者 |
松野 康二 九州保健福祉大学, 教授 (40131940)
河井 一明 産業医科大学, 教授 (60161262)
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キーワード | ゲニステイン / アセトアミノフェン / NAC / HepG2 |
研究概要 |
(1)実験動物を用いた、アセトアミノフェン(以下APAP)肝障害に対するゲニステインの効果の検討 (1)動物実験の内容:休重約20gのC57BL/6マウス(♂)に、24時間絶食後、以下の処置を行なった。 ●APAPの中毒量を腹腔内投与(500mg/kg)し、1時間後にゲニステイン(100mg/kg)およびN-acetyl-L-cysteine(以下NAC)(200mg/kg)を経口投与した。 ●72時間後にマウスを屠殺し、肝臓、血液を回収した。 (2)肝湿重量測定の方法と結果:回収した肝臓の重量を直ちに計測した。その結果、APAP投与により湿重量の僅かな増加が求められたが、すべての実験群で有意差は認められなかった。 (3)血清alanine aminotransferase(以下ALT)活性値定量の方法と結果:ALT活性測定キットを用いて血清ALT活性値を定量した。その結果、APAP投与によりALT活性の著しい増加が認められた。ゲニステイン、NACの投与はALT活性の増加を抑えた。 (4)肝臓の病理組織学的検索の方法と結果:回収した肝臓をホルマリン固定し、病理標本を作製した。顕微鏡観察した結果、APAP投与により肝細胞の著しい細胞死が認められた。ゲニステイン投与により若干の改善が認められた。NAC投与により著しい改善が認められた。 (2)培養ヒト肝細胞(HepG2)を用いた、APAP肝障害に対するゲニステインの効果の検討 (1)細胞培養実験の内容:HepG2をDMEM培地にて培養の後、APAP、ゲニステイン、NACを負荷した。 (2)生存率とコロニー形成率測定結果:APAP負荷により著しい細胞生存率とコロニー生成率が減少したが、ゲニステインあるいはNACの同時負荷で細胞生存率、コロニー生成率の減少は抑えられた。 (3)結果の考察と意義・重要性:細胞培養実験ではAPAP肝障害に対するゲニステインの効果はNAC以上に認められたが、動物実験ではゲニステインの明らかな効果を認めることはできなかった。しかしながら、ゲニステインとNACの同時投与ではNAC単独投与以上の抑制効果が見られたことより、同時投与法も含め、今後は動物への投与方法などを工夫し、ゲニステインの臨床応用の可能性を更に検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画していた血清APAP濃度の測定など実行できなかった項目もいくつかあったが、逆に計画に無かった細胞培養実験などを行なったので全体としてはおおむね予定通りに行なえたと考える。23年度に実行できなかった項目に関しては24年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・動物実験:投与方法を更に工夫してゲニステインの効果を引き出す。 ・細胞培養実験:エストロゲン受容体の関与の詳細を検討する。 ・3年間のまとめとして臨床応用可能であるかの視点で全体を俯瞰し、必要に応じて新たな実験系を組み、遂行する。
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