研究概要 |
TLCを用いた目視検出法によるトコフェロール類(α-、β-、γ-およびδ-トコフェロール)の簡易分別定量法について検討した。TLCで分離ではβ-トコフェロールとγ-トコフェロールは分離できなかったことから、これらは(β +γ)-トコフェロールとして計測した。トコフェロール類を分離後、試薬溶液[3,6-dihydroxyxanthane]を噴霧した後、光照射下、発色の様子を録画・記録し、録画画像の解析によりスポットが完全に消失した時間を誘導期の終わりとして求めた。スポット消失時間とトコフェロール類の濃度の関係は、いずれの濃度領域においても直線とはならなかったが、近似式計算により、2次関数で非常によく表現され、2.5~62.5μg/mlの濃度範囲で相関係数R2は0.995~0.998であった。 各トコフェロール類の0.25及び1.25mg/10ml溶液をそれぞれ9連で分析した際の誘導期の計測値の相対標準偏差は6%以下であった。市販の大豆油に標準トコフェロールをそれぞれ0.595mg/g添加した際の回収率は、93~106%で、その測定値の相対標準偏差は2.5~5.7%(n=4 or 5)であった。 市販の新鮮な食用植物油16種及びポテトフライを揚げた大豆油(4種)、キャノーラ油(4種)の計24種についてTLC法とHPLC法により測定したトコフェロール量を比較した。尚、HPLC法においても、β-トコフェロールとγ-トコフェロールの和として評価した。その結果、両方法間に非常に良好な相関性が認められ(R2=0.931~0.967)、本法により簡便・手軽にトコフェロール類の分別定量が可能であることを示すことができた。 本法のTLC分析自体に必要な油の量は100μg程度と非常に微量で分析が可能であり、測定結果はHPLC法とよく一致したことから、簡易分析法として有効な方法と考えられた。
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