ゴマリグナンであるセサミンはラット肝臓の脂肪酸酸化を上昇させ、反対に脂肪酸合成を低下させる。また、大豆に含まれるリン脂質は脂肪酸合成抑制作用を持つ。24年度は、セサミンと大豆リン脂質の組み合わせがラット肝臓の脂肪酸代謝と血清脂質濃度に与える影響を調べた。SD系雄ラットを4群に分け対照食および5%の大豆リン脂質、0.2%のセサミンあるいは、両者を含む飼料を21日間与えた。セサミンと大豆リン脂質は血清脂質濃度を低下させた。トリアシルグリセロール濃度にはセサミン+大豆リン脂質飼料群で著しい低下が見られた。セサミンと大豆リン脂質は多くの肝臓脂肪酸合成系酵素の活性を低下させ、両者を組み合わせた群で最低値を示した。同様にセサミンと大豆リン脂質は各種脂肪酸合成系酵素のmRNA量を減少させ、両者を組み合わせた群で最低値を示した。セサミンは肝臓の各種脂肪酸酸化系酵素の活性を上昇させた。多くの脂肪酸酸化系酵素の活性に大豆リン脂質の影響は認められなかったが、3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素の活性のみセサミンと大豆リン脂質両者で増加し、セサミン+大豆リン脂質添加群で最高値を示した。セサミンはペルオキシゾームとミトコンドリアの各種脂肪酸酸化系酵素のmRNA量を増加させたが、大豆リン脂質にはそのような効果はなかった。カルニチン輸送体の遺伝子発現量と肝臓カルニチン濃度はセサミン、セサミン+大豆リン脂質の両群で増加し、後者で増加量が大きかった。しかし、カルニチン合成系酵素のmRNA量には全群で差が無かった。また、血清β-ヒドロキシ酪酸濃度はセサミン、セサミン+大豆リン脂質の両群で増加し、後者で増加量が大きかった。以上の結果より、大豆リン脂質とセサミンの組み合わせによる強い脂質低下作用は主に脂肪酸合成系酵素の活性低下に基づくと思われるが、脂肪酸酸化の増加も関与する可能性もあると推察された。
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