現代社会において、葉酸の過剰摂取・欠乏は起こりうる健康上のリスクである。しかしながら、葉酸過剰摂取、あるいは欠乏が免疫システムに及ぼす影響は不明である。葉酸の過剰摂取によって制御性T細胞(Treg)表面に高発現する4型葉酸受容体(FR4)を介してTreg細胞機能に何らかの変化を及ぼすことが想定される。本研究ではTreg細胞が重要な役割を果たす経口免疫寛容の成立に葉酸の摂取状況がどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、経口免疫寛容の実験モデルとして、卵白アルブミン(OVA)抗原を用いる系を用いて検討した。AIN-93G(対照飼料)、あるいは葉酸過剰AIN-93G飼料(0.5mg葉酸/g diet)を調製した。BALB/cマウスを2群に分け、30日間自由摂取させた。続いて5mg/mlOVAの0.2mlを7日間経口投与しOVA特異的経口免疫寛容を誘導した。これらのマウスにOVAをフロイント完全アジュバントとともに皮内投与したときの免疫応答を解析した。免疫応答は血中抗体価、リンパ球抗原特異的幼若化反応について評価した。さらに、ヘルパーT細胞機能の変化に関してサイトカイン産生量を酵素免疫測定法で、Treg細胞の頻度をフローサイトメトリー分析した。また、Treg機能発現に重要なFoxp3のmRNA発現量をリアルタイムPCR法にて定量した。葉酸過剰摂取あるいは葉酸欠乏によりOVAに対する経口免疫寛容の誘導が亢進した。以上の結果から実際に葉酸異常摂取が生体の免疫応答変動を引き起こす可能性が推察された。この葉酸過剰摂取による免疫寛容亢進の機序として、Treg細胞の分化亢進が考えられた。
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