葉酸過剰摂取、あるいは欠乏が免疫システムに及ぼす影響は不明である。制御性T細胞(Treg)に4型葉酸受容体(FR4)が高発現することが報告されている。葉酸摂取異常によってTreg表面のFR4を介してTreg細胞機能に何らかの機能変化を及ぼすことが想定される。葉酸過剰摂取では卵白アルブミン(OVA)に対する経口免疫寛容の抑制、葉酸欠乏では経口免疫寛容の亢進傾向を見出した。この葉酸欠乏/過剰摂取による免疫寛容変動の機序として、Treg細胞の量・機能変動が考えた。葉酸の摂取状況がTreg細胞分化に及ぼす影響を調べた。葉酸欠乏飼料で1ヶ月飼育したマウスの脾細胞中の内在性Treg(nTreg)頻度(CD4+CD25+Foxp3+)は対照群と有意な差はなかった。また、過剰葉酸含有飼料(50mg/g diet; 通常飼料の葉酸含量の2000倍)で飼育した場合も有意な差はなかった。この時のCD4+細胞のFR4発現にも有意な差がなかった。nTreg分化に葉酸摂取状況は関係しないようである。一方、これらマウス脾細胞からin vitroでTregを誘導した(iTreg)場合、iTreg頻度は葉酸の摂取量に依存して低下する傾向が見られた。近年、TregとIL-17産生細胞として重要なTh17との分化の可塑性が注目されている。これらマウス脾細胞からin vitroでTh17を誘導したところ、葉酸の摂取量に応じてTh17頻度が増加した。以上のことから、葉酸はTreg/Th17の可塑性に影響を及ぼしている可能性が考えられる。葉酸欠乏状態での免疫寛容亢進にはTh17分化低下によりiTreg/Th17 バランスのTreg分化優位な状況になっている可能性がある。一方、葉酸過剰状態での免疫寛容抑制のしくみにはiTregよりもTh17分化が優位になっている状況が免疫寛容抑制に関与している可能性がある。今後この現象の分子メカニズムの解明が必要である。
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