高ポリフェノール含有食品の摂取は心血管系疾患のリスクファクターを改善するが、その詳細については未だ不明な点が多いことから、今回我々は生体顕微鏡を用いることによって、生理的条件下におけるポリフェノールの微小循環に対する作用をIn vivo生体顕微鏡を用いて直接観察した。ラットに15%ラード含有飼料およびココア1%を含有する高脂肪食を摂取させ6週間飼育し、麻酔下で腸間膜をKrebs緩衝液で満たしたチャンバ内に展開し、生理的状態での細動脈血管径を記録した後、Phenylephrine処理し局所的収縮状態に保った後に、Acetylcholin(Ach)処理し内皮依存性細動脈拡張を記録した。その後Papaverine処理し、最大血管拡張状態で血管径を計測した。生理的状態における血管拡張度は対照群に比較し、高脂肪食摂取群で有意に低下していたが、この低下はココア群では認められなかった。Ach処理による血管内皮依存性血管拡張能は正常食群に比較して高脂肪食群で有意に低下したが、ココア群では高脂肪食による低下の改善が認められた。また最大血管拡張に対する内皮非依存性の血管拡張度についても正常食群で有意な低下が認められたが、ココア群では正常群との間に差異は認められなかった。また、ラットの挙睾筋をウレタン麻酔下で剥離し、ココア、ココアに含まれるプロシアニジンを経口投与し投与後の赤血球速度、細動脈径、開存毛細血管数などの微小循環の変化を経時的に記録した。ココアおよびココアに含まれるポリフェノールは投与後10分から有意に赤血球速度上昇させ、開存毛細血管数を増加させたが、細動脈血管径に対して明確な作用は示さなかった。以上の結果から、プロシアニジンをはじめとするポリフェノールは摂取直後から微小循環動態の改善作用を及ぼし、その結果として高脂肪食によって誘導される血管内皮障害の発生を抑制することが示唆された。
|