糖尿病患者の体内においてはメイラード反応が亢進し、多様なタンパク質修飾構造(AGE)が蓄積して腎症、動脈硬化などの糖尿病合併症(DC)の発症に関与する。とくにグリセルセルアルデヒド(GLA)による修飾は強い生理作用(毒性)をもたらすことが知られているが、当研究室では、リジン残基が修飾を受けているピリジニウム化合物のGLAPおよびアルギニン残基が修飾を受けているイミダゾリノン化合物のMG-H1を主要なAGEとして同定した。また、GLAPは、単独でマクロファージ様J774.1細胞に対して細胞増殖抑制作用を示すことを明らかにしている。本年度はCaproyl-GLAPを抗原としマウスに免疫した結果、ELISAによりマウス抗血清が、7週目以降に顕著な抗体価の上昇を示した。また、競合ELISAによりGLAP特異的抗体であることを確認した。しかしながら、GLAPと同様のピリジニウム骨格を持つGA-pyridineおよびOP-Lysineに対して交叉反応を示した。よって、本研究により得た抗血清は、GLAP構造のピリジニウム骨格を認識する抗GLAPポリクローナル抗体であることが示された。HL-60細胞、PC12細胞および分化PC12細胞において、GLA-BSA濃度依存的にcontrolと比較して細胞増殖率が減少した。また、GLA-BSA添加群では抗GLAP抗体の添加により、細胞増殖率の減少が回復した。GLA-BSA中にはGA-pyridineおよびOP-Lysineは検出されていないため、抗GLAP抗体がGLA-BSAにおいてGLAPを捕捉することにより細胞毒性を抑制することが示唆された。これらの結果は、GLA修飾タンパク質の生理作用を示すエピトープの化学構造が、GLA由来の主要AGEのGLAPであることを支持した。
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