本研究では、我が国で消費される主要な農作物について、主要アレルゲン候補分子群を網羅的にクローニング、発現または精製し特異抗体を得る。それらを用いて検出・定量系を構築し、品種間差異、栽培環境(病虫害被害の有無)による変動、加工法、調理法などによる種々の変動解析を行うことによって農作物アレルギーリスクの変動要因を明らかにする。本年度は、昨年度に引き続き、各種農作物の汎アレルゲンであるソーマチンライクプロテインに関して抗体を作製した。また他にもLTPに関しても精製し、抗体の作製を行った。こうして、花粉症と関連する、主要な農作物中のクラス2食物汎アレルゲンを検出しうる抗体として、プロフィリン、ソーマチンライクプロテイン、Betv1ホモログ、パタチン、LTPなどに対する抗体の作製をほぼ終え、これらを用いて、品種間、栽培方法、加工方法、調理方法、成熟度合い等による変動解析を行った。その結果、農作物の品種によって変動するアレルゲンや、病害虫被害によって変動するアレルゲン、変動しないアレルゲン、完熟によって増加するアレルゲン、減少するアレルゲンなど、多様な変化が明らかとなった。また加工方法によってもアレルゲンの変動は大きく、特にクラス2アレルゲンの場合のリスク要因となる可溶性(ネイティブな)分子のアレルゲン性に関しては、加工法や調理法の影響を受けやすく、加熱や酸処理などによって沈殿しリスク低減化する可能性が示唆された。 今後は、花粉症に関連するマイナーな汎アレルゲンに関しても、抗体作製や変動解析などを行うことにより、より詳細な知見が得られる。また、変動解析においても、より幅広い変動要因について解析することにより、より充実した知見が得られると考えている。
|