研究概要 |
日本のアレルギー罹患率は増加傾向にあり、その原因として食生活や住環境の変化が挙げられている。アレルギー性疾患の症状を悪化させる物質については、その存在が予見されるが、特定には至っていない。生体内の酸化ストレスレベルの上昇は、アテローム性動脈硬化やガンなどの疾病や老化に関与することが示唆されているが、アレルギー性疾患への影響についてはほとんど明らかにされていない。そこで、アレルギーの発症に関与するIgEおよびアレルギーの抑制に関与するIgAに着目し、細胞株を用いた抗体産生調節機能検定系を確立し、IgEおよびIgA産生に及ぼす脂質過酸化物の影響を検討した。 IgE産生細胞株U266およびIgA産生細胞株KHM-1Bをそれぞれ異なる細胞数で24時間培養後、培養上清中のIgEおよびIgA量をELISAにより測定し、至適細胞密度を決定した。この方法を用いて13-ヒドロペルオキシ-6,11-オクタデカジエン酸(13-HpODE)のIgE産生に及ぼす影響を検討した。その結果、終濃度68μMではIgE産生に影響を及ぼさなかったのに対し、終濃度17および34μMではIgE産生を増強する傾向が認められた。4-ヒドロキシ-2-ノネナール(HNE)は終濃度17μMでU266に対して強い毒性を示したことから、より低濃度でのIgE産生調節作用を検討する必要がある。また、13-HpODEおよびHNEを終濃度0~40μMでKHM-1Bに添加し、24時間培養した時のIgA産生量を測定した結果、終濃度25~40μMにおいてIgA産生抑制傾向が認められた。この結果については、脂質過酸化物の細胞毒性によるものか、IgA産生抑制作用によるものかをさらに検討する必要がある。
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