アレルギーの罹患率が増加傾向にあり、国民の約30%が何らかのアレルギー疾患をもっていると言われている。アレルギーは発症メカニズムによりI~V型に分類され、食物アレルギーや花粉症はI型に属する。アレルゲンが体内に侵入するとIgEが産生されてマスト細胞に結合し、再侵入したアレルゲンがIgEを架橋するとマスト細胞から化学伝達物質が放出されてくしゃみや鼻水などの症状を引き起こす。このことから、IgEはアレルギーの原因抗体であると言える。また、I型アレルギーにおいてはIgEだけでなくIgAも重要な役割を果たしている。IgAは粘膜に分泌され、アレルゲンと結合してアレルゲンが体内に侵入するのを防いでいる。したがって、IgAの産生抑制はアレルギーの発症を促す。 活性酸素により生成した脂質過酸化物は、がんや老化の原因であるだけでなく、炎症反応においても重要な役割を果たしている。しかし、脂質過酸化物が炎症の一種であるアレルギー反応に影響を及ぼすかは明らかになっていない。そこで、脂質過酸化物の一種である4-ヒドロキシ-2-ノネナール (HNE) がIgEおよびIgA産生に及ぼす影響を検討した。 HNE存在下でIgE 抗体産生細胞株U26624時間培養し、上清中のIgEを定量した結果、HNEはIgE産生に対して顕著な影響を及ぼさなかった。これに対し、IgA産生細胞株KHM-1Bでは、濃度依存的にIgA産生を抑制した。また、HNEがKHM-1Bのチロシンリン酸化に及ぼす影響を検討した結果、HNE添加12時間後のチロシンリン酸化が抑制されていた。 これらの結果より、HNEはIgA産生を抑制することでアレルギー促進的に作用する可能性が示唆された。
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