研究概要 |
生体膜(リン脂質二重層)の内外層を構成する脂質分子は大きく異なる。しかし,in vitro及びin vivoにおける膜の酸化に関するこれまでの多くの研究は,膜リン脂質のアシンメトリー(非対称分布)の影響について考慮していない。申請者は先に,ドコサヘキサエン酸(DHA)等の高度不飽和脂肪酸(PUFA)含有ホスファチジルエタノールアミン(PE)のアシンメトリーが膜の酸化安定性に大きく関与することを明らかにした。平成22年度は,DHA摂取に伴い発現する酸化抑制機構として,PEのアシンメトリーを中心に,ビタミンE(VE)の抗酸化効果等に対するPEの相乗作用,及び,コレステロール(Cho)の膜安定化効果等に対するPEの共存効果について検討した。 その結果,Choはリポソーム非対称膜において抗酸化作用を発現することが分かった。リポソーム非対称膜は,生体膜の構成脂質のモル比率(PE:ホスファチジルコリン(PC):VE:Cho=1:1:0.005:1)と同じ比率に調製したことから,Choは生理的濃度においてVEに比べて同等かそれ以上の抗酸化能を有すると推察された。また,Choの抗酸化作用は共存するPCの分子形状の影響を受けることが分かった。
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