研究課題/領域番号 |
22580154
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
日下部 裕子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品機能研究領域, 上席研究員 (90353937)
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キーワード | 味細胞 / 味覚 / イオン動態 / カルシウムイメージング |
研究概要 |
味細胞以外でイノシトール三リン酸受容体IP3R3およびJaw1を発現している培養細胞株であるWHEI231細胞をモデル系として分子複合体形成検出方法を確立し、次にその方法を用いて舌上皮を用いて味細胞にこれらの分子を含む複合体が存在することの証明を試みた。 (1)味細胞モデル系としてのリンパ球細胞を利用した分子複合体形成機序の解析 舌に占める味細胞の割合は数千個と極めて微量であり、味細胞を用いた免疫沈降法を成功させている例は少ない。そこで、リンパ球を由来とするWHEI231細胞は味細胞に発現しているIP3R3とJaw1を発現していることが明らかにされているためWHEI231細胞内でIP3R3とJaw1の結合を解析した。その結果、WHEI231内でIP3R3とJaw1が直接結合している可能性が高いことを示唆する結果を得た。また、TRPM5などを強制発現させ、IP3R3とJaw1との相互作用を解析したところ、TRPM5がIP3R3とJaw1と結合する可能性を示唆する結果を得た。 (2)複合体形成がイオン動態制御に及ぼす影響の解析 培養細胞HEK293にlawlおよびIP3R3を導入し、IP3R3を活性化させる細胞刺激に対する細胞内カルシウムイオン濃度変化をカルシウムイメージング法により解析することで、その分子のカルシウムイオン動態制御に及ぼす影響の解析を行った。その結果、Jaw1が細胞内カルシウム濃度の変化に直接作用する可能性が低いことが示された。また、甘味受容体とIP3R3の両者に作用することが示唆されているCIB1について強制発現系を用いてTlr2あるいはIP3R3とCIB1の相互作用の検討を、免疫沈降法とカルシウムイメージング法により行った。その結果、CIB1が甘味受容や甘味の情報伝達に直接関与する可能性が低いことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した内容について研究を進捗することができたため。 味細胞を用いた免疫沈降法が困難であることは当初から予想しており、その対策として行ったWHEI231細胞を用いた実験により、味細胞を用いた実験の条件設定や、TRPM5,IP3R3,Jaw1が一つのシグナロソームに含まれる可能性を示唆する結果を導き出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞で観察できた分子間相互作用を味細胞で検討する。また、我々が開発した味受容体の膜移行系を用いた味受容体とその下流のシグナロソームとの関係についても解析を行うことで、より効果的に研究を進める。
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