研究課題/領域番号 |
22580158
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
益守 眞也 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (50282702)
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キーワード | 低酸素環境 / 湿地林 / Melaleuca / 光合成 / 沈水耐性 / 通気組織 / フトモモ科 |
研究概要 |
本研究課題は,湿地に生育する樹種を対象に,根系が低酸素にさらされても生育できる耐性機構を解明しようとするものである。特に物理的な耐性機構として,樹皮(周皮)の部分に形成される二次通気組織に着目し,その形成過程や誘導要因を明らかにすると共に,幹から根系に欠けての酸素濃度分布を微小酸素電極を使って実測し,通気組織の形成に伴う樹体内の酸素動態の変化を明らかにすることを目的としている。 昨年度までに全身を水没させた条件(沈水条件)において伸長成長を続けられることを確認した湿地生樹種のMelaleucaを材料とした実験を平成23年度も続け,水中での樹体内の酸素濃度を微小酸素電極を用いて実測することに成功した。茎内部の酸素濃度は光を照射すると上昇し消灯すると低下するという光に照射に対応した変動を示した。照射時の値は大気の酸素分圧を上回ることもあった。陸生の木本植物であるMelaleucaが,水中でも光合成をおこない十分な酸素を産生することができ,少なくとも光照射時には水中であっても酸素不足に陥っていないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に適した供試植物体の育成が予想よりも難しく進捗が遅れたこともあったが,沈水条件下での植物体内の酸素動態の実測に成功し,陸生植物の沈水耐性機構の一端を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
全身を水中に沈めた条件下での樹体内のダイナミックな酸素動態を明らかにすることができたので,今後とも,湿地生樹種の湛水耐性のうち特に沈水条件に対する耐性を重点的に明らかにしていく。特に,通気組織の発達との関連や,光以外の環境要因を変化させた場合の酸素動態を実測し,湿地生樹種が沈水環境下で生存できる仕組みを解明する。
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