研究概要 |
1.物質生産:強度間伐を受けた壮齢ヒノキ人工林の現存量および純一次生産を,上層(ヒノキ)と下層(落葉広葉樹)に分けて算出した。推定のための相対成長式をヒノキ5個体と広葉樹278個体について作成した。現存量は157ton/haで同年代のヒノキ人工林の半分であったが,純一次生産は6.19ton/ha/yearで同年代のものと比較すると約75%であった。純一次生産の低下は,葉の生産効率が低下していなかったことから,葉量そのものまだ回復していないことによるものと結論された。人工林全体に占める下層の現存量の割合は3%と小さかった。一方で,人工林全体に占める下層の純一次生産の割合は15%と無視できない値であった。下層植生は,純一次生産の多くをリターに分配しており,現存量への分配は相対的に小さかった。このことから,下層植生が増加することによって,炭素固定だけでなく,炭素循環の様式が変化していることが示唆された。 2.林冠再生:ヒノキ樹冠では,シュートの再伸長によって後生枝が形成されていた。 後生枝の形態や物質分配特性は,通常の枝と変わらなかったが,サイズが小さいことによって,より非同化部への配分が小さく抑えられていた。後生枝による葉量回復は,全体の25%を占めており,葉量回復に対する寄与は大きかった。 3.植生変化:間伐直後からの植生構造の変遷を解析した結果,種数は変わらないものの,種組成が大きく変化していた。消失していった種群は比較的陽性のものが多かった。また,消失した種の3割が,埋土種子を形成し,次の攪乱のときの更新準備を整えていた。
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