研究概要 |
枝分布:平成23年度の5個体に加え,10個体の毎枝調査を行った。枝数密度の分布が樹冠頂端から指数関数的に減少すること,枝サイズが枝数密度の拡張自己間引き曲線によって表現できることを見いだした。これらの関係から,葉量および枝量の垂直分布を表現する式を提案できた。 メタボリック・スケーリング:代謝を支配すると考えられる葉と非同化器官の表面積を計測した。小枝,大枝,樹冠,個体レベルで器官現存量と器官表面積の関係を調べた結果,葉面積が葉重量の1乗に,非同化器官表面積が非同化器官重量の0.8乗に比例することを見いだした。また,葉面積は非同化器官の1乗に比例した。これらの関係から個体重量に対する葉面積と非同化器官表面積の関係が曲線アロメトリーで表現できることを見いだした。これらの関係は小枝,大枝,樹冠レベルで同じであったが,個体レベルでは異なっていた。その結果,小さな個体ほど葉面積あたりの非同化器官表面積が増加し,枯死に至り易いことが推察された。 下層植生による種子散布:強度間伐によって形成された低木層から種子散布が行われているかどうかを検証した。低木層に64種が出現しているにも関わらず,種子散布を行っているのは12種に過ぎず,人工林の植物種多様性が持続的に維持されるという提言に対して疑問を提示できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の研究計画に従いデータの取得をほぼ完了できた。また過去15年間の森林構造の変化,植物種組成の変化と埋土種子の種組成,下層植生の資源植物としての利用可能性について論文発表できた。広葉樹の年輪解析については年輪形成が不完全なため,一部断念することとなったが,代わりに過去の植生アーカイブをとりまとめることで対処できた。
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今後の研究の推進方策 |
データの取得と解析をほぼ終えることができたので,炭素固定機能,メタボリック・スケーリング,後生枝による樹冠修復について論文を執筆する。 年輪コアサンプルの取得を成長休止期に行ったので,その計測と解析を継続する。 研究を遂行する過程で,低木層の被陰による林床層の衰退が推察されたので,低木層を除去することで被圧の影響を解除する実験設定をおこなった。この生態系操作実験に対する林床植生の応答を調べることで,新規に提案された仮説を検証する。
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