ブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)を引き起こすカシノナガキクイムシは、寄主木や穿孔部位をどのように選択しているのか。これらを明らかにすることは、拡大する一方のナラ枯れ被害を最小限に食い止める防除方法の策定に寄与することが期待される。京都府東部の二次林で、【1】穿孔対象とされる可能性が高い樹木の特性、【2】穿孔されて枯死する可能性に影響する要因、【3】穿孔部位の探索決定様式とその適応的意義、をそれぞれ明らかにするための調査を行った。 【1】については1haのプロットを4個設定し、プロット内のブナ科樹木について計測した特性を分析する予定だったが、今のところ2個のプロットしか設定できていない。来年度残りの2個を設定し、あわせてデータを解析する。【2】については、2010年4月から5月にかけて調査区90haを踏査することで2009年被害木の特性を計測し、2008年被害木のデータとあわせて解析を行った。その結果、穿孔された個体が枯死に至る確率には個体サイズは影響を及ぼしていないこと、樹種や地形が異なると確率も異なること、枯死に至る確率には樹種や地形以外の要因で空間的な変異が生じていることが明らかとなり、2011年3月の学会で発表した。【3】については、2009年にアタックされて枯死したミズナラ7個体を対象に、地上高1.5mまでの全ての穿孔に羽化トラップを仕掛け、捕獲されたカシノナガキクイムシを2010年7月から10月にかけて毎週回収し、穿孔ごとに繁殖成功度を計測した。データ解析の結果、穿孔した位置が低く凹んだ場所であるほどカシノナガキクイムシが繁殖成功する確率が高いこと、穿孔密度が中程度の時に繁殖成功度が最大になることが明らかとなり、2011年3月の学会で発表した。
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