研究課題/領域番号 |
22580164
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
井上 幹生 愛媛大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10294787)
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キーワード | 人工林 / 渓流魚 / アマゴ / バイオエナジェティックモデル / 流下物採餌 / 倒流木 |
研究概要 |
人工林が生態系に及ぼす影響を多面的に評価することは、今後の森林政策・管理において極めて重要である。本研究では、バイオエナジェティックモデル(Bioenergetic model:流速、水深、流下餌量を基に魚類が獲得できるエネルギー純益を算出するモデル)を用いることにより、人工林化が渓流魚の環境収容力(潜在的に生息可能な個体数)に及ぼす影響について、より定量的で、かつ、広く適用可能な評価法を構築することを目的としている。 2011年度は、これまでに愛媛県石手川源流域で集められた流速、水深、流下餌量のデータを基に、Hughes&Dillによるバイオエナジェティックモデル(以下、HDモデル)を用いて人工林河川と天然林河川とでアマゴの環境収容力がどの程度異なるかについての試算を行った。その結果、アマゴが獲得できるエネルギー純益は、天然林河川と人工林河川とで大きく異なり、前者では後者での約1.7倍と試算された。すなわち、渓畔植生を人工林から天然林に転換することにより、アマゴの環境収容力は1.7倍増加することが示唆された。また、HDモデルによって算出されたエネルギー純益と実際に生息しているアマゴの生息量には有意な正の相関が得られ、HDモデルによる試算の妥当性を支持する結果となった。 その他に、別の調査地におけるサンプル採取も行った。石手川源流域で得られている人工林河川と天然林河川とでの流下餌量の違いが、他の地域でも認められるかどうかを検討するために、別の水系である仁淀川水系黒川にて流下餌量のサンプル採取を行った。これについては2012年度にサンプル処理、解析を行って検討する予定である。また、2010年度の調査で得られた倒流木の供給がアマゴの生息環境に及ぼす影響に関するデータをとりまとめ応用生態工学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、申請当初、(1)HDモデルがアマゴに適用可能であることを示す、(2)HDモデルを用いて天然林河川と人工林河川の違いを評価する、および(3)空中写真によるアマゴ生息環境評価の可能性を提示する、という3点を具体的目標として掲げたが、とれらのうちの(2)までは遂行していることから、おおむね順調と評価される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の予定に従って、上記(3)の解析を試みる。すなわち、空中写真から判読される林相から流下餌量を予測する統計モデルを作成し、それに基づいて空中写真からアマゴ生息環境評価を行う。林相から流下餌量を予測するモデルが信頼性の高いものになるかどうか鍵となるが、いずれにせよ、実際に得られた事実をもとにその有用性を検討することになる。
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