平成24年度は、高知県の森林流域の出水時のSS(懸濁態物質)、TN(全窒素)、硝酸の各濃度の測定を終了し、大出水(総雨量133、212、226mmの3出水の平均)と総雨量742mmの非常に大きな出水(以降、特大出水と記す)の栄養塩(SS、TN、硝酸)流出量を比較・解析した。硝酸の1出水での流出量について特大出水時は大出水の1.4倍程度であったが、TNは約30倍、SSは約370倍にまで増加した。1出水での流出量についてTNに占める硝酸の割合は、大出水での30~70%に対して特大出水では2%であった。特大出水の栄養塩動態は粒子態の著しい流出増加となることがわかった。なお、特大出水後の平水時の測定結果や衛星画像の確認により、流域内に斜面崩壊が起きた形跡はみられなかったため、今回の結果は斜面崩壊等の影響を受けたものではないと考えられる。また、高知県の流域試験地で観測した2011年の年雨量が3991mm、2012年が4134mm、年流出水量は2011年2371mm、2012年2978mmで、年消失量(=年雨量-年流出水量)から考えると、流域外への漏れなど若干流出水量が少ない可能性がある。茨城県の森林流域での観測結果に関して、高知県と茨城県の観測結果に既往の報告を加えて大出水時の硝酸の動態を比較したところ、大出水の後半以降の硝酸濃度変動パターンが異なることもわかった。地域的な地質、地形、土壌等の影響が大きく寄与していると考えられた。
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