研究課題
里山林構成種を対象として、光環境の変動に対する個々の樹種の生理的可塑性を明らかにし、種の共存に関わる林冠ギャップの役割を検証することを目的とした。異なる光環境で生育させた里山構成種の苗木について、葉の形態的・構造的可塑性と成長との関係について解析をおこなった。相対照度4%と100%で生育させた落葉広葉樹4種(アカメガシワ、イヌシデ、コナラ、エゴノキ)と常緑樹(サカキ、ソヨゴ、アセビ)の苗木の成熟葉をサンプリングし、葉面積、葉厚、気孔密度、LMA(g/cm2)を測定した。その後、葉を固定・樹脂包埋処理し、ミクロトームで切片を作成し、光学顕微鏡下で撮影した画像をもとに、細胞空隙率、LMA、空隙周囲長、葉肉細胞率を測定した。4%の葉(陰葉)と100%の葉(陽葉)の比率をplasticity indexと定義し、それぞれの葉の可塑性の指標とし、これらと成長との関係について解析した。その結果、陽葉と陰葉の比率(可塑性)が高いほど、成長量が高い傾向で、中でもアカメガシワは可塑性も大きく成長も高かったのに対して、アセビは可塑性が最も低く成長も低かった。常緑樹は落葉広葉樹に比べて、可塑性が低い傾向であった。常緑樹の中では、ソヨゴは葉の構造的可塑性が高く、光への適応幅が広い樹種であることが考えられた。本研究から、異なる光条件に対応して、いかに構造的に適応した葉を作れるかどうかが、各樹種の適応能力を規制する要因となっていることが示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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