研究課題/領域番号 |
22580171
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
阿部 俊夫 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (10353559)
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キーワード | 河畔林 / 落葉 / 散布範囲 / ヤナギ類 / 風 / 高所作業車 |
研究概要 |
河川への落葉供給源として保全すべき河畔林の範囲を明らかにするため、河畔林主要構成種であるヤナギ類樹木の落葉移動距離を調査した。H23年度は、調査地を太平洋側の勇払川河畔林に移動し、昨年度と同様の調査をおこなった。すなわち、マーキングしたオノエヤナギ落葉の散布範囲をリタートラップで調べ、風や雨量などの気象観測をおこなった。 2年間かけて2つの河畔林で調査した結果、ヤナギ類の落葉散布範囲は、樹冠上部の葉で根元から15~25mまで、樹冠下部の葉で10~20mまでであり、高い位置の葉の方が遠くへ散布されやすいことが分かった。これは樹高により落葉散布範囲が変わることを示唆している。散布範囲の広さは方位により異なり、落葉期の風との関係を調べると、風の強い方向ほど遠くまで落葉が散布されることが分かった。このことから、ある方位の落葉散布範囲を決める要因は、基本的にはその方位へ吹く風であると考えられた。 一方、昨年度の秋に林床へ設置した落葉模型(ヤナギ、ハルニレ、ブナの3種類)は、落葉期から半年経過しても移動はわずかであり、特にヤナギ落葉模型はほとんど移動しなかった。昨年度の調査地ではササや積雪が多く、林床での再移動を阻害したものと考えられた。また、ヤナギの葉は、ハルニレやブナに比べてサイズが小さく、林床上で風を受けにくいと考えられる。当年度も、林床へ落葉模型を設置済みであり、翌春の開葉期に調査をおこなう予定である。昨年度の調査地に比べて晩秋~冬の降水量が少ない地域のため、違った結果が得られるものと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査地探しに思ったより時間がかかったが、野外調査そのものは順調であり、必要なデータはほぼ得られた。
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今後の研究の推進方策 |
すでに野外調査の90%は終わっており、今後は、得られたデータを用いて、落葉移動のモデル化に向けた作業を中心におこなう予定である。ただし、モデル計算で必要となる落葉の落下速度については、無風条件での測定ができる施設が北海道支所になく、近隣で適当な施設を借りられなければ、本所(つくば)へ出張して計測することも検討している。
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