林床での落葉移動距離を調べるため前年11月に勇払川河畔林に設置した落葉模型(ヤナギ、ハルニレ、ブナ)の移動を6月初めに調査した。平均移動距離はヤナギで0.74m、ハルニレで2.24m、ブナで2.15mであった。前年度の赤川河畔林と比較すると、全体的に林床での落葉移動は活発で移動距離も長かった。太平洋側の勇払川河畔林では、日本海側の赤川河畔林に比べれば晩秋の降雨や冬季の積雪が少なく、落葉が移動しやすいものと考えられた。しかし、林床での移動は、樹冠から落下する際の散布範囲(根元から15~25mまで)と比較すると極めて短く、落葉供給源として必要な河畔林幅を考える際にはあまり重要ではないといえる(ただし、積雪地で平坦な地形の場合)。 また、落葉散布モデルに必要な葉の落下速度を、エゾノキヌヤナギ(赤川河畔林)、オノエヤナギ(勇払川河畔林)の2種について、森林総研本所の体育館内で計測した。いずれも乾燥状態で平均2m/s前後の値が得られたが、湿潤状態では2.5~2.7m/sとより落下が速かった。頻度分布は、おおよそ正規分布に従っていると考えられた。 これまでに得られたデータを用いて新たな落葉散布モデル(物理モデル)を構築した。従来のモデルは1次元予測であり、落葉がどの方位へ多く散布されるかは評価できなかったが、新モデルでは面的な予測が可能であり、実測データとの整合性も良好である。このモデルを用いれば、任意の河畔林において、林内の風向・風速と落葉の落下速度分布から高精度で落葉散布を推定でき、落葉供給源として必要な河畔林幅も求めることが可能である。 現在、河畔林がさらに成長した場合のシミュレーションについて取り組んでおり、近日中に結果が得られる見込みである。成果については、次年度に学会発表等を考えている。
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