平成22年度の成果 当該年度は、本研究の調査地である新潟県上越市の伏野地すべり地にて地震観測を開始するとともに、既存の地震時地すべり事例を収集、整理した。 1.地震観測の開始 伏野地すべり地脇の不動地に地震加速度計を設置し、3成分(東西、南北、鉛直)の地震観測を12月から開始した。この地域は冬季の積雪深が最大3-5mに達するため機器類に大きな雪圧が作用したり、地表に多量の融雪水が発生したりするため、本体のアンカー固定、防水、耐雪処理等を厳重に施した。また本体が積雪下に埋没する冬季においてもモニタリングを可能とするため、公衆電話回線を用いた常時接続型ネットワークを構築した。その結果、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の本震及び余震による地震動を多数観測した。とくに中越地方を震源として3月12日に発生したM6.6の地震では、最大加速度382gal(Y成分)、計測震度5強を記録した。なお地震時の地すべり移動量については計測機器が積雪下にあるため現時点では不明である。消雪後にデータの回収と解析を行う予定である。 2.地震時地すべり事例の収集と整理 新潟県中越地震及び中越沖の発生時における近傍地域での地すべり観測事例を収集した。収集した10カ所の地すべり地の地下水位と地中歪みのデータを整理したところ、地震にともなって水位低下が現れた事例は2例、歪み変動が現れた事例は2例あったが、地震発生と明瞭な対応のある事例は1例に留まった。当該地すべり地は全て対策工事が終了したか、実施途中の段階であったことから、降雨に対する対策工の効果が地震に対しても発揮されていた可能性が示唆された。
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