本課題では、同一の地すべり地における複数の地震時地すべりの観測結果を用いることで、地震の誘因のみに焦点を絞り、地震力を評価する新たな指標を提示することを目的とする。 新潟県上越市の伏野地すべり試験地において地震動、地すべり変位量、間隙水圧および気象要素を継続観測した。本地すべり地で過去に発生した3回の強震動(2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震、2011年長野県北部地震)の観測波形を様々な要素に変換して地すべり変位量と比較した。その結果、地すべり変位量と高い相関を示したのは地震動の最大速度や最大変位であった。このことから地すべり移動に影響を与える地震動の指標としては、従来慣用的にも散られてきた最大加速度よりも最大速度や最大変位を用いる方が適切であると推定された。 また、伏野地すべり試験地で観測された長野県北部地震の本震および余震30回の地震波形について平野部におけるそれらと比較し、地すべり地に到達することで地震動の振動がどのように変化するかを検討した。その結果、山地斜面に存在し破砕が進んで軟質化した地すべり地では、地震動の4Hz以上の高周波成分が減衰して長周期化が引き起こされる可能性があることが分かった。地すべり地における地震動の地形効果や斜面表層の影響等は従来より指摘されてきたが,今回の地震観測データから,その傾向が改めて示されたと考えられる。今後は地すべり地内の多点に地震計を設置し、地すべり地に到達する地震動の変質機構についてより詳細な観測を展開する計画である。
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