社会的背景を考慮した新たな人工林施業を考えるために、複数の樹種を植栽した混交植栽人工林において、①炭素固定機能を地上部の蓄積量・成長量および成長経過から明らかにし、②立木の個体間距離や立木密度から、混交植栽人工林における林分構造・林内光環境・土壌養分が相互作用的に及ぼす炭素固定機能(生産性)への影響を定量化し、単一植栽人工林と比較する。このことによって、混交植栽人工林において生産性を損なわないための間伐指針を明らかにする。 平成22年度に行った山梨県有林内の混交植栽人工林のリストアップ結果から、単一植栽人工林と混交植栽人工林での材積の比較を、森林簿のデータを用いて行った。カラマツ-シラベ混交植栽人工林では、カラマツがシラベの材積・樹高ともに上回っている林分がほとんどであった。それぞれが単独で植栽された際の樹高・材積と比較すると、樹高よりも材積に関して、より地位が上位である傾向が示された。 山梨県鳴沢村内の列状伐採された41年生のカラマツ-シラベ人工林において設定した100×80mの調査区において、樹冠の計測と、成長錘による成長経過の把握を行った。樹高に関しては、平均でカラマツ16.3m、シラベ16.8mと、差は見られなかった。樹冠長に関しては、カラマツ5.5m、シラベ8.7mと、シラベの方がより長い樹冠を有していた。これは、樹冠部での競争において、常緑性であるシラベが、落葉性であるカラマツを抑圧していることが示唆された。 主に2000年以降の混交植栽人工林における文献をレビューし、「混交植栽人工林における現状と課題」と題した総説にまとめ投稿した。
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