研究課題/領域番号 |
22580177
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研究機関 | 大阪市立環境科学研究所 |
研究代表者 |
山崎 一夫 大阪市立環境科学研究所, 研究主任 (30332448)
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キーワード | 紅葉 / 共進化 / アブラムシ / アリ / 適応的意義 |
研究概要 |
紅葉(黄葉)の適応的意義として、生物間相互作用を重視した次の2仮説が提唱されている。 紅葉は秋に木へと移住するアブラムシなどの植食性昆虫に対する木からの警告信号であるという共進化仮説と、アブラムシを誘引して好蟻性アブラムシによって木を他の植食性昆虫から防衛してもらうという三栄養段階相互作用仮説である。これら2仮説を検証するため、大阪城公園のエノキ、箕面公園のイロハモミジ、金剛山のウリハダカエデで、秋の紅葉(あるいは黄葉)の程度、春のアブラムシの発生量、アリの来訪数、食害量、シュートの長さ(木の活力の指標)の関係を調査した。エノキでは、黄葉とアブラムシの発生量、アリの随伴には有意な関係が認められなかったが、2シーズンのうち1シーズンで黄葉が強い木ほど葉の食害量が少ない関係が認められた。これは、アブラムシ以外の食葉性昆虫に関して共進化仮説が成り立つ可能性を示唆している。イロハモミジでは、とくに有意な関係は見出されず、黄葉する木にアブラムシがやや多い傾向があったが、葉色と食害量は相関がなかった。2仮説とも支持されなかった。ウリハダカエデでは、どの木でもアブラムシの発生はほとんどなかった。黄葉する木は、緑葉や赤葉の木より食害量が多かった。2仮説より防御表示仮説に合う結果かもしれない。現在、より詳細な解析を行なっているところである。他に、春の新葉と秋の古葉の色を比較し、春と秋での葉色に対する選択圧を推測する調査も行なった。秋に赤葉となる樹種は、春の新葉も必ず赤いという法則性があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紅葉の意義に関する仮説を野外データから検証しようというのが本研究のおもな目的であるが、3調査地でのデータを取り終えることができたので、ほぼ順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今までの暖温帯中心(金剛山のみ冷温帯下部)の3調査地に加えて、紅葉がより発達している冷温帯(本州中部山地)でのデータを取る予定である。また、それらのデータを詳細に解析してまとめる。新葉と古葉の色の比較も継続して調査し、春と秋での葉色に与える要因の違い、樹木と草本での紅葉の発達程度の比較とその要因などに取り組む。
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