研究課題/領域番号 |
22580178
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小藤田 久義 岩手大学, 農学部, 准教授 (40270798)
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キーワード | 抽出成分 / タンニン |
研究概要 |
縮合型タンニンは植物界に広く分布する高分子ポリフェノールであるが、微生物による分解機構は未だ明らかにされていない。これまでにタンニンを高度に分解する菌株としてシイタケ(Lentinus edodes Is)が選抜されている。本研究はモデル化合物であるProcyanidinB3(PB3)を用いて、菌体外における縮合型タンニンの低分子化プロセスを解明することを目的とした。液体培地中のタンニンの挙動分析では、タンニン由来の分解物は検出できなかった。PB3を添加した液体培養では、PB3自体の毒性が高く、生育過程で培地が赤褐色化し、菌糸が伸長しなかった。そこで、培養ろ液によるPB3の変換を試みたところ、PB3の減少に伴い経時的に増加するピークを検出した。コントロールにはこのような変化が見られないことからL.edodes IsによるPB3由来の変換物であると考えられた。この変換物を単離・精製し、構造解析した結果、末端ユニットA環の酸化物(PB3キノン)であると同定された。次いで培養ろ液によるPB3キノンのさらなる変換物の追跡を行ったところ、コントロールにおいてPB3キノンの減少に伴い経時的に増加するピークが検出され、PB3キノン異性体であると推定された。菌体反応によるPB3の転換について寒天培養により検討したところ、リング状の黄色着色帯が認められた。培地部位毎のGPC分析では着色帯外側でPB3、PB3キノン、異性体及び重合体に相当するピークを検出した。着色帯及び着色帯内側ではそれらが消失し、低分子物質が生じていた。さらにHPLC分析では着色帯外側でPB3、PB3キノン及び異性体を検出した。これらの結果より、PB3はPB3キノン、異性体の生成を経た後、一度重合してから低分子化される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はシイタケ培養濾液を用いて前年度に合成した縮合型タンニン2量体および1.5量体モデル化合物を処理し、処理後に得られる分解代謝物を単離・構造決定することを目的とした。検討の結果、代謝物の構造決定に成功し所期の目的は達成されたが、これらの代謝物は低分子化による産物ではなかったため縮合型タンニンの分解経路を推定するまでにはいたらなかったことから、標記の達成度とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、特にタンニン分解の初発機構の解明を目的として、高分子の縮合型タンニンモデル化合物を添加した寒天培地上でシイタケの培養を行い、培地中に生じたタンニン分解生成物を分析し、分解過程での構造変化を調べる。寒天培地を用いることで高分子タンニンからの分解中間体を培地中に固定・蓄積できることが想定され、これにより縮合型タンニンの初期分解経路を推定することが可能になると期待される。
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