平成22年度では、まずカラマツ心持ち正角材を必要本数調達して、初期状態における寸法・ヤング係数等の測定を行った後、試験体を各乾燥条件別に振り分けた。高温セット法で2種類(48時間、18時間)及び中温乾燥(312時間)の乾燥を行い、あわせて天然乾燥材について重量等の測定を行った後、それぞれについて屋外用、屋外屋根付き用、屋内用に振り分けて所定の桟積みを行った。実大曲げ試験用の材は長野県林業総合センターに設置し、暴露後約1ヶ月後にも重量等の測定を行った。金物府食試験用試験体とフラクトグラフィー観察用試験体は信州大学農学部に設置した。 フラクトグラフィー観察については、完全に柾目になるように十分配慮した形で縦引張試験体を作製して、静的引張試験を行った。引張破壊後、破壊位置近傍からフラクトグラフィー観察用の試片を乾燥条件ごとに断面の位置(中心、中間、角)別に採取した。また、木口面、柾目面、板目面の各断面について試片作製を行い、電解放出形走査電子顕微鏡を用いて観察した。 フラクトグラフィー観察からは、天然乾燥材と高温セット材では、天然乾燥材の破面の方がより断面が平滑に近く、高温セット材はランダムな凹凸が観察された。事前の予想では、高温セット材の方がより脆性的な破壌を生じることから引張破面は平滑な横断面になるものと考えられたが、詳細な観察によると、天然乾燥材の破面では繊維状の突起が密集していたことから、強度低下が生じていないと推定された。スギ材についても試行的に観察を行ったところ、カラマツと異なる傾向が見られた。 以上の成果については、平成23年3月に京都で行われた第61回日本木材学会大会においてポスター発表を行った。
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