地球温暖化問題の解決の糸口の一つとして、炭素固定能力の面から木質バイオマスの活用に対して大いに期待されており、中でも、間伐材の有効利用は喫緊の課題である。このため、背割りのない心持ち柱材の人工乾燥法として、材面割れの抑制とコスト削減の両面から、乾燥初期段階において急激な乾燥条件を設定するいわゆる「高温セット法」が広く普及してきた。しかし、長野県の主要な樹種であるカラマツについては、高温セット材の強度低下が指摘されている。そこで、本研究では、強度低下の定量的な把握とフラクトグラフィー観察による強度低下のメカニズム解明を主な目的としている。 平成22年7~8月にかけて人工乾燥を行った正角材について、計4種類の乾燥方法(高温セット法2種類、中温乾燥1種類、生材状態から天然乾燥を行っている材)と3種類の暴露方法(屋外暴露・屋外屋根付き暴露・屋内保管)を組み合わせて約1年間の暴露試験を行い、平成23年10月に実大曲げ試験用試験を行い、曲げ破壊後の試験体をさらに約1年間シートをかぶせた状態で保管した。平成24年度は、この材からJIS曲げ試験体を作製して無欠点小試験体の曲げ試験を行った。実大曲げ試験結果と同様に、暴露条件間の強度性能の差異は乾燥条件別の差異と比較して明らかに小さかった。従って、仮に乾湿繰り返しによる引張セットの解消があったとしても強度性能への影響は小さいものと考えられる。 フラクトグラフィー観察については、カラマツ高温セット材の中心部では、早材・晩材ともに脆性的な平滑な破面が観察されたのに対して、スギ高温セット材の中心部では、晩材は平滑な破面であったのに対して早材はささくれ状の破面が観察された。このことが、カラマツ高温セット材の強度低下に影響している可能性が示唆された。
|