研究課題/領域番号 |
22580183
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 助教 (60273489)
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研究分担者 |
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 助教 (10293911)
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キーワード | 木質化 / 樹木細胞 / リグニン / 顕微ラマン分光 / MALDI-TOF MS / コニフェリン / シリンジン / ヒノキ |
研究概要 |
ヒノキの直立木から活発に木化が進行している時期に分化中木部を採取し、凍結保存した。得られた正常材分化中木部より、スライディングミクロトームを用いて厚さ20μmの横断面切片を作製し、乾燥させた。切片をMALDI-TOF MS測定用のターゲットに導電性両面テープで固定し、その上からマトリクスの溶液をスプレーし、真空乾燥させた。その切片についてMALDI-TOF MSを用いてマッピング測定を行った。その結果、コニフェリンと同様にm/z=381のピークを示す物質が、二次壁形成中木部に局在することが明らかになった。この結果は同一試料を顕微ラマン分光法を用いて調べたこれまでの結果とよく一致していた。さらにMALDI-TOF MS測定時にアルゴンガスを導入し、m/z=381にピークを示す物質のフラグメントイオンのパターンを標品のコニフェリンと比較した。その結果、分化中木部からの物質と、標品のコニフェリンの両方からコニフェリルアルコール及びグルコースに由来する2つのピークが見られた。この結果より、二次壁形成中木部にコニフェリンが存在することが確認された。この方法は分化中木部に微量に存在するリグニン前駆物質(コニフェリン、シリンジン)の種類と分布を高感度で可視化するための有効な手法となりうることが明らかになった。樹木分化中木部におけるコニフェリンとシリンジンの存在についてはこれまで、抽出物の化学分析によって調べられてきており、必ずしもすべての樹木の分化中木部に存在するわけではなく、存在しない樹木もあることが報告されている。今回のMALDI-TOFイメージングを用いることにより、これまで抽出物の化学分析では検出されないような微量のコニフェリン、シリンジンの分布を検出できる可能性がある。
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