研究概要 |
林分を構成する個々の林木の材質を非破壊的に評価・診断できれば,個々の林木の高度で適切な利用が進み,ひいては森林の有する多面的機能のひとつである木材生産機能のさらなる発揮につながる.本研究は,近年共同研究者の一人が新たに開発した乾電池やUSB電源で駆動する超小型・可搬型のX線発生装置を用いて,年輪配置,材密度分布,節・腐朽等の欠点分布,辺心材や年輪内の水分分布等を二次元的に表示する立木用のポータブル非破壊材質検査装置を開発し,その装置によるフィールド実証試験を行うことを目的としている.本年度は,樹木・木材に対応したX線源・検知器の設計および製作のための予備実験として以下を実施した. 1.ヒノキおよび広葉樹数種の生材および乾燥材を既存の工業用X線写真装置で管電圧条件をかえて撮像し,予備的に最適な撮影条件の探索のための基礎データを得た. 2.実験室内においてポットに植栽された樹木苗木(シラカシ)の横断面および縦断面を小型X線源で非破壊的に撮像し,従来の破壊型X線写真法と比較した.その結果,小型X線源による画像は従来のX線写真法よりも若干解像度が劣るが非破壊的に木部を撮像できることが明らかになった.引き続き最適な撮影条件を探る必要がある. 3.実験室内においてスギ(赤心および黒心),ヒノキ,シロモジ(散孔材)の縦断面を一定条件下で小型X線源を用いて撮像した.その結果,スギおよびヒノキにおいて節,低含水率の心材の年輪を撮像できること,画像からスギの黒心の判定が可能であること,材内の虫の穿孔跡の観察が非破壊的に可能であること等が明らかになった. 4.山地等野外フィールドでの使用に適したより小型軽量なX線管の開発に着手した. 5.今年度の予備実験を踏まえ次年度のフィールド実証実験にむけプロトタイプの設計を行った.
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