研究課題/領域番号 |
22580187
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
目黒 貞利 宮崎大学, 農学部, 教授 (50112321)
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研究分担者 |
雉子谷 佳男 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10295199)
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90526526)
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キーワード | 木材腐朽菌 / バクテリア / 相互作用 / 木材腐朽試験 / 対峙培養 / 子実体 / 共培養 / 木材重量減少率 |
研究概要 |
平成22年度には,木材腐朽菌と相互作用する細菌の探索を目的に,宮崎大学田野フィールド(演習林)から子実体が発生している腐朽材を採取した。そして、子実体から腐朽菌を,また同一腐朽材から細菌をそれぞれ分離し,寒天培地上で対峙培養することで,細菌が木材腐朽菌の菌糸成長に及ぼす影響について検討した。その結果、広葉樹腐朽材から採取した木材腐朽菌Stereum sp.TN4Fの菌糸成長を放線菌Curtobacterium sp.TN4W-19が促進することを見いだした。 平成23年度には、含水率を80%に調整した木粉培地上で、木材腐朽菌TN4Fと放線菌TN4W-19を用いて木材腐朽試験をおこなった。その結果、広葉樹コナラ材または針葉樹スギ材を基質に用いた場合には、腐朽促進の効果は検出できなかった。 そこで、平成22年度に採取した腐朽材の内、スギ腐朽材から単離した腐朽菌TN-3Fとバクテリア19株を用いて、コナラ培地で腐朽試験を行ったが、明瞭な腐朽促進効果は検出できなかった。スギ培地では腐朽菌の成長そのものが非常に遅く、現在も引き続き実験を継続中である。 一方、同じく平成22年度に採取した広葉樹腐朽材から単離した腐朽菌TN-6Fに対しては単離したバクテリア44株のうち2株TN6W-4およびTN6W-11が菌糸成長促進効果を示した。これらの腐朽菌とバクテリアの組み合わせを用いて、コナラ木粉培地で腐朽試験を行ったところ、バクテリアと腐朽菌TN-6Fとを共培養することにより、木粉重量減少率が有為に向上することが明らかになった。リグニンの含有率等を検討した結果、バクテリアとの共培養によって、腐朽菌のセルロース分解の選択制が高まるものと考えられた。 以上の結果より、平成24年度には、当初の研究目的である、バクテリアの存在によって腐朽菌による木材腐朽が促進されるという現象を明確する目処が立ったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成22年からの3年間で木材腐朽菌とバクテリアの木材腐朽に対する相互作用を明らかにする予定であった。しかし、平成22年度には寒天培地上で木材腐朽菌め成長を促進するバクテリアの存在を明らかにし、平成23年度には、早くも、バクテリアと木材腐朽菌の共存が木材の重量減少率にも影響を与える可能性が示唆された。 以上の結果より、本研究は当初の計画以上に進展しているものと評価される。
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今後の研究の推進方策 |
針葉樹スギ材は広葉樹コナラ材と比較して、木材腐朽菌の成長が非常に遅いため、短期間の木材腐朽試験では、木材重量減少に及ぼすバクテリア共存の影響を、未だ明確に検出できていない。今後は腐朽試験を行うさいの外部環境を整えること、および試験期間を延長すること等により、当初の目的であるスギ材腐朽に及ぼす木材腐朽菌とバクテリアの相互作用解明に向けて検討を続ける。
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