研究課題/領域番号 |
22580188
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 克史 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (90399379)
|
研究分担者 |
今井 貴規 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (20252281)
|
キーワード | 樹木 / 柔細胞 / 細胞化学 / クライオ / TOF-SIMS |
研究概要 |
本課題は、転流物質の輸送と貯蔵や心材物質の合成と蓄積など様々な機能をもつと考えられている樹木木部柔細胞の、樹体内における実際の機能の解明を目標に、木部柔細胞の成分蓄積特性を細胞レベルで解析し、木部柔細胞の細胞齢による機能の変化を明らかにすることが目的である。本年度は、立木凍結法により凍結固定したスギ木部試料を用いて、水を含んだままの試料のクライオToF-SIMS解析と、凍結乾燥させた試料の定性かつ定量解析について、それぞれ手法の確立を目指した。 クライオToF-SIMSシステムは、名古屋大学生命農学研究科の装置を用いた(科研費基盤S、21228004、代表は連携研究者の福島。本課題代表者は連携研究者として参画)。まず、急速凍結固定した水を含むスギ木部試料についてクライオToF-SIMSシステムによる試料調整および解析の条件検討を行った。その結果、心材成分フェルギノールおよびカリウム等の成分の分布を水の分布と同時に可視化することに成功した。樹木細胞で水を含む生体高分子成分の可視化は世界で類を見ない成果である。次年度に、生体内における樹木柔細胞の成分蓄積特性を解明する準備が整ったといえる。次に、乾燥試料を用いて、レーザーマイクロダイセクション法とICP-MSおよびGCを組み合わせた樹木成分の定性かつ定量解析の手法の条件を確立した。この手法を用いてスギ試料の成分の分布特性を調べた結果、移行材から心材で発現する心材成分フェルギノールは、移行材の早材は晩材の2倍量蓄積することを明らかにした。また、この定性かつ定量解析の元素分析の結果はFE-SEM/EDXによる元素の高空間分解能解析の結果と矛盾しておらず、スギ木部の成分蓄積特性を細胞レベルで定性かつ定量的に解明する準備が整ったといえる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水を含む試料を用いたクライオToF-SIMSによる解析、乾燥試料を用いた定性かつ定量解析ともに、手法を確立することができた。この成果により、次年度は細胞齢による柔細胞の成分蓄積特性を解明できると考えられ、順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
22年度、23年度の研究により、手法を確立した。24年度は細胞齢の異なる柔細胞について成分解析データを蓄積する。得られた樹木柔細胞の成分蓄積特性の結果から柔細胞の機能についてまとめ、成果を学会発表および論文等で公表する。
|