本研究では、屋外で使用される木材に耐候性を付与する目的で用いられている木材保護塗料について、塗料成分が木材にどのように浸透し、それが耐候性能の発現に対してどのように影響するのかを明らかにする。 平成22年度は、塗料の浸透深さが異なる塗装試験体を調製して、塗料成分の浸透・分布状態を分析し、さらに塗装試験体の耐候性試験を開始するため、以下の研究を実施した。 1.スギ心材から、材表面の繊維傾斜角度(仮道管の目切れ角度)が異なる(0~6度)まさ目板を切り出し、木材保護塗料で塗装した。この方法により、それぞれの繊維傾斜角度に応じて、塗料の浸透深さが異なる塗装試験体を調製することができた。 2.塗装試験体の一部を薄切し、顕微赤外分光分析などに供して、塗料成分の浸透深さを評価した。繊維傾斜角0度の試験体では、塗料成分が深さ約300μm程度まで浸透していたのに対し、同6度の試験体では、深さ約600μmまで浸透していたことを明らかにした。 3.塗装試験体の屋外暴露試験(南向き傾斜45度)と促進耐候性試験(キセノンランプ法)を開始した。促進耐候性試験では、試験時間500時間までの途中経過ではあるが、塗料成分の浸透が深い繊維傾斜角6度の試験体が、同0度の場合と比較して、変色が小さい傾向があることを示した。 4.今後、耐候性試験を継続し、塗料の浸透深さが異なる試験体の耐候性能を評価・比較することにより、木材保護塗料の性能発現メカニズムを「浸透-性能」の観点から明らかにしていく。
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