前年度までに塗料の浸透深さが異なる試片を調製し、塗膜の主体となる樹脂や光遮蔽のための顔料など各成分の浸透状況を評価してきた。今年度は、これらの試片を屋外暴露試験と促進耐候性試験に供した結果から、「浸透-性能」の関係を考察し、以下のことを明らかにした。 1.表面の繊維傾斜角度(仮道管の目切れ角度)が異なるスギ心材まさ目板に、木材保護塗料を塗布して調製した、塗料浸透深さ600μm(繊維傾斜角6度)及び同300μmの試片(0度)について、塗料成分別の浸透深さを比較したところ、両試片ともに顔料成分の浸透は浅く(深さ50~100μm)、浸透深さの違いは主に樹脂成分の浸透の違いによるものであることが分かった。 2.これらの試験片を24ヶ月間の屋外暴露試験(南向き45度傾斜)と3000時間の促進耐候性試験(キセノンランプ法)に供して、表面の変色や撥水性の低下の傾向を比較した結果、どちらの試験においても、塗料浸透深さ600μmの試片は、同300μmの試片と比較して変色がより小さく、表面の撥水性がより高く保たれており、耐候性能が優れていた。 3.この結果は、木材への塗料の浸透を深くすることができれば、耐候性能の向上に役立つことを示している。塗料浸透深さ600μmの試片と同300μmの試片は、どちらも顔料成分の浸透が浅かった(深さ50~100μm)ことから、上記の性能差は、主に樹脂成分の浸透深さの違いによるものであったと考えられる。 以上の結果は、木材保護塗料の顔料が木材の表面付近に分布して光遮蔽効果を発揮するのに対し、樹脂や薬剤はそれより深くまで浸透して、基材である木材の安定化や生物汚染の抑制に役立つという報告者らの説を裏付けるものである。
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