本申請課題は、北海道南西部沿岸に生育するマコンブSaccharina japonicaについてプロテオーム解析を行い、探索された環境ストレスタンパク質をバイオマーカーとして各地のコンブ藻場の健全性を診断するための手法を確立するものである。本年度は、先ず、北海道の南西部日本海沿岸から津軽海峡沿岸にかけてマコンブ群落の衰退・消失が進行している現状をふまえ、(1)健全性が損なわれているコンブ藻場(小樽市忍路湾周辺)、(2)健全性が損なわれつつあるコンブ藻場(函館市住吉漁港周辺)、(3)健全性が保たれているコンブ藻場(函館市臼尻漁港周辺)を選定し、各藻場について、夏季(予備調査)、秋季および冬季に生育環境を調査した。その結果、コンブ藻場の健全性は各種栄養塩濃度(NO2+NO3、NO2、PO4、NH4)や塩分濃度との間に目立った相関は見られず、現場の海水温に関係があることが示された。また、各地域において採集・凍結保存された胞子体について、エタノール/フェノール法でタンパク質を抽出し、一次元・二次元電気泳動で展開したところ、再現性のある泳動スポットが得られた。更に、これらスポットについて分光分析を行い、また、既存の暖海性カジメの分析データと照らし合わせてプロファイリングを行った結果、高水温期に発現量が上昇するバナジウム依存性ブロモペルオキシターゼ(vBPO)活性を示す複数のスポットなどが特定できた。今後、現在進行中の培養実験によりそれぞれのタンパク質発現量増加のための環境因子を特定することにより、目的とするバイオマーカーの検出が期待できる。
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