研究概要 |
本申請課題は、北海道南西部沿岸に生育するマコンブSaccharina japonicaについてプロテオーム解析を行い、探索された環境ストレスタンパク質をバイオマーカーとして各地のコンブ藻場の健全性を診断するための手法を確立するものである。本年度は、前年度に引き続き3カ月毎に函館市臼尻町(健全域)、函館市住吉町(衰退域)、小樽市忍路町(磯焼域)の沿岸において、栄養塩(硝酸態窒素,亜硝酸態窒素,アンモニア態窒素,リン酸態リン),水温,塩分等の測定を行った。4回の調査の結果、忍路における2地点では、春季に他の調査域より塩濃度の低下(およそ28PSU)が確認されたが、今年3月の調査ではいずれの地点においても塩濃度が28-29PSUであったため、一時的な塩濃度の低下はコンブの生育に大きく影響しないことが推察された。また、新たに測定項目を設け調査を行っているが、pHや濁度(忍路は海水中の砂の流動のため高い調査地点によって高い値を示した)等にも大きな違いは認められなかった。一方、栄養塩と水温については、試験区ごとに差異が検出され、これらが藻場衰退の主要因となっていることが示唆された。また、各地域において採集・凍結保存された胞子体について、前年度に続いて抽出タンパク質の一次元・二次元電気泳動を行い、高水温期に発現量が著しく増加するハロペルオキシターゼ活性や光合成、ATP合成などに関わるタンパクスポットをおよそ40程度特定した。現在、衰退域において採取した成熟胞子体から遊走子を単離し、培養して育てた胞子体について、水温ストレスおよび栄養塩ストレスを与える実験を進めており、その発現タンパク質データをこれまで得られた天然藻体のデータと照らし合わせることにより目的とするバイオマーカーの検出が期待できる。
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