本研究では、日本海西部において、衛星タグを用いてソデイカ(Thysanoteuthis rhombus)の水平移動と鉛直移動の解明を目的とした。衛星タグを本種6個体に装着し、2個体から、最長で1週間程度の行動データの取得に成功した。残りの2個体は、経験温度から大型魚類などに捕食されたとが推定された。本研究の成果は、以下のように要約される。衛星タグを装着したソデイカは、周辺海域の流れの方向に移動したことから、海流に従って低コストな水平移動をしたと考えられた。また、水深100 m以浅で日周鉛直移動をし、経験水温が15℃以上であったことから、鉛直移動は水温に制限される可能性が考えられた。しかし、より深い水深への鉛直移動もあったことから、一時的な低水温帯への移動は可能と判断された。本研究では、短い日数ではあったが、5個体分のデータを取得し、うち2個体分の本種の水平・鉛直行動データの取得に成功した。ただし、衛星タグのサイズが大きく、大型個体への装着は有効であり、装着期間が伸長できた場合、さらに有益なデータの取得が見込まれる。今後、衛星タグ自体が小型化されることが予想され、本研究による本種への衛星タグによる行動追跡は、これまで不明であった日本海での水平・鉛直移動などに活用できる道を拓くことができた。より小さな衛星タグが開発されているまで、ソデイカはこのようなタグの研究のために最高のイカ種の1つだと考えている。
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