1.これまでに、ウニの高機能人工餌料の開発を目指し、ウニ消化機能の基礎的知見の集積を目的とし、エゾバフンウニ消化管由来のペプチダーゼの一つであるスブチラーゼ精製を行い、特異抗体を作製した。本年度では、エゾバフンウニを用いて消化管におけるスブチラーゼの局在を免疫組織化学的解析により明らかにした。その結果、主に胃に存在するメチレンブルー・アズール染色される顆粒細胞に免疫陽性反応が認められた。また、腸前半部位において、メチレンブルー・アズール染色される内向側に存在する顆粒細胞に免疫陽性反応が認められた。このことから、ウニにおいて餌は胃全体および腸前半部においてタンパク質が分解されていることが明らかになった。 2.本年度は、エゾバフンウニを用いて、ウニは主に海藻を食べるため、タンパク質分解酵素に加えてセルロース分化酵素の精製に着手した。セルロース分解酵素はこれまでにキタムラサキウニにおいて精製され生化学的性状および分子構造が明らかにされている。しかし、エゾバフンウニにおいてはセルロースの生化学的性状・分子構造・組織学的局在は不明である。そこで、エゾバフンウニのセルロース分解酵素を精製し、その生化学的性状を解析したところ、キタムラサキウニのセルロース分解酵素の示的温度より低い温度で最も活性が高いことが明らかとなった。一方、示的pHはキタムラサキウニのものと相違は認められなかった。これまでに、エゾバフンウニがキタムラサキウニに比べ高水温に弱いことが知られているが、酵素学的性状解析からも、エゾバフンウニが高水温に弱いことを初めて証明できた。
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