研究課題/領域番号 |
22580194
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
浦 和寛 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 助教 (90360940)
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キーワード | ウニ / 消化酵素 / 精製 / 特異抗体 / 局在 |
研究概要 |
ウニは古くから食用にされてきた水産重要種である。北海道はウニの主要な生産地であり、従来天然ウニを漁獲すると共に、生殖巣の発達の悪いウニを良漁場へ移植するなどの対処がなされてきた。しかし、漁獲量は減少している。そこで種苗生産、育成の技術開発が盛んに行われるようになり、人工種苗技術が確立された。その結果、ウニの漁獲量は回復傾向にあるが、期待されるほどの漁獲量の増加には至っていない。その要因の一つとして磯焼け漁場の存在が示唆されている。磯焼け漁場ではサンゴモ科の紅藻が優先し、ウニの餌となるコンブなどの大型海藻は生育できない。そのため放流した種苗が餌不足に陥り、種苗放流事業の十分な効果が得られない可能性がある。磯焼け漁場のウニは餌不足のため生殖巣の発達が低くほとんど利用されていない。そこで、これらのウニを養殖することで生殖巣の増大を図り、商品として有効利用する試みが行われ生殖巣の品質向上に適した餌の開発が必要とされている。また、放流後の種苗の生残率を上げるために種苗生産後も稚ウニを飼育する中間育成事業が行われている。しかし、中間育成を行うためには陸上水槽などの設備が必要であり、ウニの餌となる海藻が減少する冬期間には海藻の代替餌料を確保する必要がある。従って、養殖事業や中間育成事業を効率良く行うためには、量や品質を管理しやすい人工餌料の開発が重要である。人工餌料の開発にはウニの消化吸収能力に関する基礎的知見の集積が必須であるが、これまで殆ど行われてきていなかった。本研究では、エゾバフンウニウニ消化酵素を精製し生化学的特性を明らかにすることを目的とした。これまでに、申請者らはエゾバフンウニの持つタンパク分解酵素を精製し、生化学的特性を明らかにすると共にタンパク分解酵素の消化管における局在を明らかにしてきた。本年度は、ウニにとって重要なセルラーゼの精製、特異抗体の作製ならびに局在を明らかにした。その結果、エゾバフンウニのセルラーゼはキタムラサキウニセルラーゼに比べ高温に弱いということが明らかになった。消化酵素としての多糖分解能力はキタムラサキウニのそれと同じであった。また、ウニにはセルラーゼが3種類存在する可能性を示した。さらに、セルラーゼの局在は咽頭から直腸まで局在していることを初めて明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに申請者はウニがもつタンパク分解酵素の精製、生化学的特性および消化管における局在を明らかとし論文として公開してきた。今年度は、さらに海藻を食べるウニにとって重要な消化酵素であるセルラーゼに着目しエゾバフンウニからセルラーゼを精製し、その生化学的特性を明らかにするとともに、これまでに明らかにされているキタムラサキウニセルラーゼの生化学的特性と比較することができた。この研究成果からウニ養殖を推進するための各ウニの飼育条件などの設定が可能となった。これは、本研究が最終目標としているウニの新たな養殖技術開発につながるからである。さらに、本年度では、セルラーゼに対する特異抗体を作製し解析したところウニには3種類のセルラーゼが存在する可能性を初めて明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、3種類存在するセルラーゼをそれぞれ分離精製し特異抗体を作製しウニ消化管における局在を明らかにする。それとともに、本研究の成果からウニ用の高機能人工餌料の開発にとりかかり、これまでに明らかにしてきたウニ消化酵素の能力から推定した飼育条件において作製した餌を与えウニ生殖巣の肥大に及ぼす影響を調べる予定である。
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