本申請課題はウニの消化生理学の基盤研究であり、これらの研究成果をもとにウニ用人工餌料の開発および革新的なウニ養殖事業を展開することを最終目標としている。これまでに申請者らは、ウニのタンパク分解酵素をキタムラサキウニおよびエゾバフンウニを用いて精製し生化学的特性を比較解析してきた。さらに、タンパク分解酵素の消化管における局在を免疫組織学的解析により明らかにした。本年度はウニ消化酵素のセルラーゼを精製し生化学的特性を明らかにすることを目的とした。使用したウニはエゾバフンウニを用いた。ウニ内臓からセルラーゼを定法に従い精製し、これまで明らかにされているキタムラサウニセルラーゼと生化学的特性を比較解析したところ、エゾバフンウニセルラーゼは熱耐性がキタムラサキウニセルラーゼより低いことが明らかとなった。具体的には、エゾバフンウニでは20度を超えると酵素が失活するが、キタムラサキウニでは30度まで安定していることが明らかとなった。pHに対する依存性には両者に大きな差異は認められなかった。また、精製したセルラーゼを抗原として特異抗体を作製した。この抗体を用いて内臓抽出物に対してウェスタンブロット解析を行った結果、ウニ内臓には異なる分子量を持つセルラーゼが少なくと3種類存在することが明らかとなった。さらに、この抗体を用いて免疫組織学的解析を行った結果、セルラーゼは咽頭、食道、胃、腸、直腸の内腔側の組織表面に局在する顆粒細胞に存在することが明らかとなった。今後は、これら3種類のセルラーゼを分離・精製し、それらのセルラーゼの生化学的特性を明らかにすると共に局在の違いを組織学的に明らかにする必要がある。
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