研究概要 |
マコンブ胞子体の栄養成長期と生殖成長期(子嚢斑と呼ばれる生殖器官形成期)にある葉状部組織において、組織化学的観察、フェノール化合物およびヨウ素含有量測定、活性酸素(ROS)生成量とROS消去系酵素活性および抗酸化活性測定を行った。その結果、子嚢斑形成時にROS発生量、フェノール含有量、抗酸化活性および活性酸素消去系酵素4種(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ,カタラーゼ,グルタチオンレダクターゼ,スーパーオキシドディスムターゼ)の活性が増加することを見出し、子嚢斑を形成する側糸および遊走子嚢の伸長に活性酸素が必要なことや体内での活性酸素の濃度を制御するために抗酸化物質あるいは活性酸素消去系酵素活性の上昇が起きていることを明らかにした。フェノール化合物は動物の被食等に対する化学的隔壁として作用していることから、成熟に伴い被食動物等に対する抵抗性を向上させていることが分かった。また、子嚢斑形成に伴いヨウ素含量が減少し、ヨウ素放出に基づく酸化防御メカニズムとそれ自身の抗菌作用が抵抗性向上に寄与していることが示唆され、ヨウ素もまた静的抵抗性の化学的障壁の一つとなっていると考えられた。さらに、葉状体ディスクを培養し成熟を誘導したところ、子嚢斑の形成に伴いROSの体外への放出が認められ、過敏感反応に代表される事後的な抵抗性(動的抵抗性)と密接に関連していることが示唆された。以上のことは、コンブ胞子体の成熟過程において繁殖の成功に向けて生物的要因に対する抵抗力を向上させていることを示すものである。
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