研究課題/領域番号 |
22580199
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三浦 智恵美 愛媛大学, 南予水産研究センター, 講師 (90518002)
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キーワード | 魚類 / 成長 / 性成熟 / 配偶子形成 / 成長ホルモン / インスリン様成長因子 / 生殖腺培養系 / 性ステロイドホルモン |
研究概要 |
本年度は、成長と性成熟の因果関係の解明の応用研究を行なった。まず形態学的および内分泌学的に養殖ブリの精子形成および卵形成の初期過程を詳細に解析することで成熟開始時期を特定した。その結果、オスの生殖腺体指数(GSI)は3月までほとんど変化が見られないが、4~5月には増加し産卵期を迎えた。メスのGSIは5月の上旬に急激に増加し産卵期を示した。精巣では2月までは精原細胞のみであったが4月には多数の精子が存在した。卵巣では、2月までは周辺仁期の卵母細胞が確認されたが、3月より卵黄の蓄積が開始され、4月から5月の上旬には最終成熟に達した多数の成熟卵が観察された。これらの事から養殖ブリの成熟開始時期は、水温の上昇する3月末から4月上旬であることが明らかとなった。またそれに伴い性ステロイドの上昇も確認された。 ブリ養殖では、性成熟に伴い、産卵後の著しい体重減少、身質の劣化や褐色化、さらにヒコウキと言われる尾部の骨が湾曲する変形などの多くの問題が発生する。これらの原因の一つとして、魚類の性成熟過程、および産卵に関わるプロテアーゼ及びリパーゼの作用が考えられる。本年度は、プロテアーゼ・リパーゼが繁殖期の魚類に及ぼす作用を詳しく解析した。その結果、産卵期の17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の上昇に伴い、筋肉中のプロテアーゼ・リパーゼ活性が増加する事が明らかとなった。この事から、生殖腺の成熟を伴っていない幼魚にDHPを投与し、プロテアーゼ・リパーゼ活性を測定した所、DHP投与群では、それらの活性が対照群と比較して有為に増加する事が明らかとなった。産卵期のサケ科魚類にて引き起こされるブナ化は、性ホルモンによって引き起こされることが報告されているが、この生涯に一回産卵を行なうサケ科魚類で顕著に見られるブナ化現象と、多回産卵を行なう養殖ブリの産卵後の体重減少など様々な問題が同様の現象である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
養殖ブリの配偶子形成を形態学的および内分泌学的に解析する事で、養殖ブリの成熟開始時期が特定され、更に性成熟と給餌と成長の関係が、おおむね明らかになった。また、養殖ブリの産卵後の体重減少やヒコウキ型奇形の現象がプロテアーゼ・リパーゼ活性の増加と関連している事が明らかとなり当初の計画にそって順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、成長のコントロールによるブリの成熟に伴う成熟抑制技術の確立の実証試験を行なう予定である。更に、難行しているブリ成長ホルモンの測定系の開発に力を入れ、給餌、成長および成長ホルモンの三者の関係を明らかにする予定である。また、本課題は次年度で修了するため研究のまとめを行い、本研究の成果を論文・学会等で発表し、魚類養殖の効率化に貢献する。
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