研究課題/領域番号 |
22580205
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
清原 貞夫 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 教授 (50117496)
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キーワード | 味覚 / 嗅覚 / 内耳 / 側線 / 摂餌行動 / 投射経路 / ゴンズイ / 脳 |
研究概要 |
ゴンズイの内側か外側の嗅索の投射領域及び嗅索に線維を送る細胞体の終脳での存在部位を解析した。内側嗅索は同側の終脳の腹側野内側部、腹側野腹側部、背側野中央、背側野後部、視索前核、及び手綱核と間脳の腹内側部に投射する。一部は反対側の終脳にも進み、終脳腹側野内側部と終脳背側野後部に終末する。また、終脳腹側野、背側野において多逆行性標識された細胞体が確認された。一方、外側嗅索は終脳(腹側野内側部、背側野後部)、手綱核、間脳内側部、反対側の終脳腹側野内側部に終末する。また、終脳腹側野腹側部において逆行性標識された細胞体が観察された。逆行性標識の細胞体は、終脳から嗅球に遠心性線維を送り、二次出力ニューロンあるいは嗅球内の介在ニューロンにシナプスしていると思われる。以上の結果から、終脳における嗅覚系の機能局在的な構築は、嗅索での内側と外側の線維グループに単純に対応していないと考えられる。 3種の内耳神経の投射域を解析した。投射域はすべて同側で、卵形嚢神経は内耳前方核、内耳下行路核の腹側領域、勾耳巨大細胞核、内耳接線核への投射が確認できた。隣接して存在する球形嚢と壺嚢を支配する神経の中枢における没射領域は非常に似ていて、内耳前方核、内耳下行路核の背側・背内側領域、内耳巨大細胞核、内耳側線内側核に終末する。 後方側線神経は延髄背側の2つの部位終末し、一部は小脳の顆粒隆起に達することが分かった。この2つの部位は勾耳側線内側核と電気感覚葉と同定し、前者には感丘、後者にはアンプラ器からの情報が入ると推察される。側線系の一次中枢からの上行性経路を追跡した結果、中脳の半円堤に両側性の投射がみられ、この部位が側線系の主要な二次中枢であることが分かった。 嗅索切除を行った魚でも、正常魚と同じようにベタインやプロリンで覚醒され、探索行動の誘発が観察され、味覚が摂餌行動の最初の段階から関与していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
嗅覚,側線、内耳感覚の中枢への投射経路等の形態学的解析はおおむね順調に進展している。しかし、これらの感覚の摂餌行動への関与の解析が遅れている。実験途中で、ゴンズイが味覚系を使い海水pHが8.20から8.00に減少するだけで顕著に応答することがわかり、この感受性を使いゴカイなどの底性生物を補食していることが考えられる。その摂餌行動解析の実験を開始したため、当初予定した行動実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ゴンズイのpH変化やアミノ酸で誘起される摂餌行動に嗅覚、味覚,体性感覚がどのように関与するかに焦点をあてて実験を展開してきているので、内耳と側線感覚の摂餌行動への関与の行動解析が十分できていない。特にpH感受性は驚く程鋭敏であり、ゴンズイはこの感受性を利用して底性生物の呼吸活動に連動して起こる環境海水のpHの僅かな減少を感知し、摂餌行動を行っている可能性がある。このため、最終年ども味覚嗅覚系と摂餌行動との関係を解析したい。
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